【3年生MYP】百人一首に親しむ。
ねらい
現状、日常生活で生徒全員が百人一首に触れる機会はあまりないとされ、生徒に百人一首についての質問をしてもほとんどの歌を知らないと答えたものが多かった(最近は映画「ちはやふる」の人気によって、「ちはやふる 神代も聞かず 竜田川(以下略)」の歌だけは知っている生徒が多かったが)。
百人一首を学ぶことで、様々な古典的表現を習得することが必然的に可能となり、また当時の生活や文化などを知ることもできると期待する。さらに歌の意味の理解に加えて、当時の文化的背景についても理解を深めることができると考える。
単元のはじめに百人一首かるたで「散らし取り」のゲームをし、また単元学習中に「ちはやふる」や「超訳百人一首うた恋い。」などの比較的生徒が親しみを持ちやすい視覚教材を用いることで百人一首の世界に楽しみながら触れ合ってもらい、古代に生きた人々の感性に触れ、現代の感覚と似たような点などを探し、百人一首について考えを深めたり興味をもってもらうことが本単元のねらいである。
概要
1時間目
(目標)百人一首について知る①
・百人一首かるたを用いて「散らし取り」のゲームをする。
2時間目
(目標)百人一首について知る②
・教科書や副教材『新国語便覧』などを活用し、百人一首についての基本的な知識を得る。
・アニメ「ちはやふる」を鑑賞し、競技かるたとはどのようなものかを知る。
3~4時間目
(目標)百人一首について鑑賞・分析する
・100首ある歌のうちから3首選び、その歌の現代語訳や歌の技法、作者についてや歌が詠まれた背景などを調べる。
・アニメ「超訳百人一首うた恋い。」を鑑賞し、それぞれの歌の背景を学ぶ。
5~8時間目
(目標)選んだ歌の魅力を伝える
・自分が選んだ3首のうちからさらに1首を選び、歌の魅力を紹介する(スライドにして3分程度の発表をする)。
9~10時間目
(目標)歌を基にしたストーリーを創作する
・発表した一首について、「超訳百人一首」を書く。
※「超訳百人一首」…鑑賞・分析した歌について、史実に基づき物語を創作する。
その他
・適当なタイミングで百人一首下の句暗記テストを行う。
100首まで終わった後、再び「散らし取り」のゲームを行う。
(はじめの頃よりも素早く札が取れるようになっているか、実感させる。)
成果(ふりかえり)
・歌の中で使われる技法や文法を、自分たちで調べて理解していく姿勢が見えた。
・視覚教材として扱った「ちはやふる」や「超訳百人一首うた恋い。」は生徒も真剣に観ていて、その中で百人一首の知識を学んでくれたり、歌の奥深さを共有してくれたりとあったので、扱った効果はあったと考えられる。
・歌の意味について、作者の思いに深く共感する生徒がいた。
・「超訳百人一首」の取り組みでは、作者の気持ちを推測したり、気持ちに寄り添ってストーリーを考えたりする生徒が見られた。その際、歌や作者についての下調べを丹念に行い、歌の解釈の二つの先行論をあげ、自分はどちらの説を基にストーリーを創作するか、解説文を用いて示すことができる生徒もいた。奈良から平安、鎌倉にかけての時代にはどのような文化や風習があったのか、自ら疑問を持ち、質問してくる生徒も見られた。
・この単元学習中に、学校全体で取り組んでいる「おーいお茶新人俳句賞」を行ったが、こちらは俳句でありつつも、「恋」の句を創作する生徒が多い現象が興味深かった。これに乗じて百人一首にも恋の歌が多く収録されていることを説明することができ、なぜ人は恋の歌を詠んでしまうのか、明確な結論は出なかったものの、一人一人に考えさせることができた。
・歌の技法や文法などの種類は、生徒が選んだ歌に限られてしまうので、もっと幅広く知識を身につけるにはどうするべきか検討することが今後の課題である。
(シュレスタ絵玲奈)