対談インタビュー①開智日本橋学園でDPを修了して

左から近藤、小松君、木塚、内山さん

開智日本橋学園に1期生として入学。DPを修了した今、国際バカロレアでの学びを振り返る。

今回、対談するのは一期生として入学した小松君と内山さん、DPコーディネーターである近藤と担任の木塚の4人。学内で前例がない中でのスタートでしたが、無事にバイリンガルDPを修了しました。二人には多くの時間を共にした先生たちと、これまでのIBの学びを振り返ってもらいました。

近藤:どうぞよろしくお願いします。本日は色々と二人に聞いていこうと思います。まずは、バイリンガルDP(国際バカロレア機構から授与されるバイリンガルDP修了証書)を修了したことについて率直にどのように感じていますか?

 

小松君:素直にうれしいです。ですが、二年間を通して自信を持ってDPを取得できるとは思っていました。スコアが追いついていないと思われる時期もあったものの、良い面、もっとできた面含め、2年間の努力量が反映されたと思っています。34点は納得できました。DPを始めた頃、34点は普通に取れると思っていたけれど、しっかり頑張らないと修得できないものと理解しました。もしかしたらもっと上を目指せたかもしれません。

 

内山さん:諦めずに頑張ってよかったなと思います。DP1年目(高校2年)の2学期頃から私は34点を目標にしていました。ただ、30点を超えるか、不安がありました。コア科目(知の理論、課題論文、CAS)が心配でしたが、最後まで諦めなくてよかったです。初めは、DPをやる意味を理解できずに、心が折れそうな時期もありました。ただ、周りの友人の受験への取り組みも刺激になり、コツコツやっていきました。

 

近藤:二人とも様々な思いを抱きながらここまで来れたんですね。そもそも高校2年からのDPコースへの進学と関連して、大学選びはどのように考えていましたか?

 

内山さん:私がDPに進学した理由は、イギリスの大学に進学したい気持ちが強かったことと、中学の頃からMYPをやっていたというのもあり、やってみようかなと思いました。逆に言うと、特別行きたい学部があったわけでもありませんでした。ただ、DPコースに入ってから自分が一生を通して楽しんでできる仕事をしたいと考え始め、そこから行きたい大学を調べ始めました。徐々にやりたい分野も決まり、その結果行きたい大学も明確になり、そこに行くための最善策がDPだったと今では感じています。

  小松君:僕は全く違う考え方で、シンプルにIB(MYP、DP含め)の学び方が自分にとって、しっくりきているからやっていました。自分は自分から課題意識を持って物事を学んでいくことが好きなので、探究する自由度の高いIBの学びが向いていました。進学は今でも尚、探り探り迷いながら進めているような感覚もあります。なので僕の場合は必ずとも進学とは強く関連していなかったと思います。

 

  近藤:IBの学びで良かったことや、役に立ったことはありますか?

 

  内山さん:外向的になったことだと思います。私は元々人前で自分の意見をどんどん言うタイプではありませんでした。しかし、MYPでもDPの授業では自分の意見を共有する機会が多く、IBのカリキュラムで学んでいくうちに周りに自分の意見をもっと多くの人に聞いて欲しいと思うようになりました。自分から進んで周囲とコミュニケーションするようになっていったんですね。そうすると学年が上がるにつれてコミュニティが広がり、輪を広げられたのはIBで培ったコミュニケーションスキルのおかげだと思います。MYPの頃から続けてきたYA(ヤングアメリカンズ)招致委員会での活動の影響も大きかったです。以前は、仲の良い友人としか話さなかったけど、今は年齢や国籍問わず、誰とでも話してみたいと思えるようになりました。



  小松君:僕は、客観的に自分を見れるようになった気がします。特に知の理論などのコア科目、好きだった言語と文学の授業で物事を深く批判的に思考することが多く、自分自身のことも多面的に考えるようになりました。CASというコア科目では授業外で行う活動の計画を立て、自己管理スキルや社会性スキル等を意識するようになりました。体育祭などの学校行事、学校外で行った音楽イベント企画での外部の人との協働作業を通じて、自分でコントロールできることとそうでないことも理解できるようになりました。また、1期生DPコースは2人だったので、自分のペースで進めることもできました。僕と内山さんとは性格も得意分野も正反対なのですが、お互いの良いところを生かし合う工夫もしていきました。お互いに「そこは違うんじゃない。ちょっとその分析甘いよ。」など率直に互いの足りないところも指摘しあえたのは、DPの成績をあげるためにも人間的に成長するためにもとてもいい経験となりました。

近藤:木塚先生はDPで、しかも2人クラスの担任ということでスタートしましたが、振り返ってみてどうですか。

 

木塚:二人への印象は自分のやっていることをきちんと言語化している人たちなんだなって思ったのがまず第一印象でした。困ったときには自分たちから助けを求めることができる人たちだと思ったので、二人に1から10まで教えるというよりは、一歩離れたところから見守る…大学の先生みたいな、そんなイメージでやれたらいいなと思っていました。逆に二人の方から、こんな風に意識したらいいクラスになるんじゃないかみたいなことがあれば聞いてみたいですね。

 

小松君:僕が思ういいクラスというのは、学業的にも人間的にも成熟できるような環境だなと思います。何かわからないときにわからないって先生や友達に対して言ったりとか、友達同士でも素直に良くないと思ったところをお互いに言い合える関係だとすごくいいなと思います。自分がそういう環境にいたいというのもあったし自分がそういう環境作りを心がけようというのもあったので。お互いの目標を達成するために目的を持ったコミュニケーションができる仲間がいると、すごく成長できるなと思いました。

 

内山さん:私はクラス内で得意・不得意という概念をなくした方がいいかなと考えています。DPの2年間でスランプに陥る感覚を味わうこともあれば、苦手な科目が、逆に得意になったり面白くなったりという機会もたくさんありました。あとは、自分がちょっと疑問に思ったこととか、違うんじゃないかって思ったことはすぐに口に出せば、他の人に意見を聞いてもらえる。また、それぞれの意見を丁寧に吸収できるような機会を全員が作れればいいんじゃないかなというふうに思っています。例えば、ひとつの答えがある問題があったとして何人かで違う答えが出たときに、どのような解法で出したのかとかを議論しながら間違いに気づける人もいると思うんです。逆に答えがたくさんあればどんどん広げていっていいと思います。得意だから言わなきゃとか、不得意だから言っちゃいけないとかそういうことはなくて、誰もが同じ土俵に立ってディスカッションしていければいいですね。

木塚:二人の話を聞いていると、上から見ているわけじゃないけど、大人だね(笑)
多分、二人とも共通して相手の話をちゃんと聞けるってことが前提にあるのかって思っていて。言われたら聞けるし、「聞きますよ私は!」というスタイルも出せることが二人の魅力だと思います。自分をしっかりと持ちながら相手の話を聞く機会も多かったのかなと思うし、様々なトレーニングを積み重ねてきたからこそ、そういうことができるようになるのかなと。きちんと安心して話し合える場があるということが良かったのかな。

 

近藤:今、皆さんが話したようなクラスの雰囲気を作るにはどのようにしたら良いと木塚先生は思いますか?

 

木塚:今までの6年間の担任の先生それぞれが、まずは生徒の話しを聞いてみることされてきたと思うんですよ。私自身もそういうことにこだわりながらやってきました。こういったやり取りの中で信頼関係が築かれていって、だからこそ表面的な関係性だけではなく、きちんと深く入り込んだところまで突き詰めて、深めていけるのかなと思います。きちんとやりとりをして、お互いに安心して話しあうことが大切だと思いますね。


近藤:
最後に二人に聞きたいのですが、開智日本橋学園で行ったIBの学びが今後どのように生きていくと思いますか?

 

小松君:言語の授業やコア科目などを通して、何かに対して深く理解する、或いはしようとするための姿勢を学べました。今までの担任や教科の先生たちも僕のことを理解しようとするっていう態度をすごく示してくれたから、そういうところにインスパイアを受けたというのもあります。先ほどの話と少し繋がっているのですが、この「何かを理解しようとする姿勢」は今後の学びの場面においても、普段の生活においても、人間的に成長するために非常に大切なものだと思いますね。

 

内山さん:すべての面において役に立つと思います。IBを通して物事の良い面も悪い面含め、たくさんのことを学ぶことができました。そしてそれが自分の自信にも繋がりました。IBは自分が得意な分野だけでなく、苦手な部分も含めて、逃げることなく総括的に取り組むことができるプログラムだと思っています。自分と向き合う時間の大切さ、計画を立てることの大切さ、人との関わり方など社会で生きる上で根本的に必要な概念・スキルを学びました。この先、大学に進んで論文を執筆したり、社会人として多くの人とコネクションを作る時などに生きてくると思います。